β崩壊による自己の他者化

前回は、電子とニュートリノの間で「Wボソン」をキャッチボールする度に、電子がニュートリノに、ニュートリノが電子になるという話をしました。

そして、このような電子とニュートリノの入れ換わりは、2者間だけを見ていると分かりませんが、大局的に見ると、β崩壊に関する現象でした。

そこで改めて、β崩壊の構造式を紹介します。

これまでは、電子捕獲を表す③式を使って、電子とニュートリノの関係性を見てきましたが、上図には「Wボソン」が含まれていません。ですからここでは、①式にWボソンを組み込みます。すると次のようになります。

この式を「湯川相互作用」と言うそうなのですが、まず、④式は、中性子が陽子に崩壊してWボソンを放出する様子を表し、次の⑤式は、放出されたWボソンが電子と反電子ニュートリノに崩壊する様子を表しています。

Wボソンは寿命が短く、生成してもすぐに電子とニュートリノに崩壊するため、このような2段階の式になるようです。

そして、⑤式を入れ替えると次のようになります。

ただ、これだけですと、暗号みたいで分かりにくいかも知れないので図にしてみます。

W⁺ボソンを基準にした⑥式のイメージ図ですが、左側が電子、右側がニュートリノとすると、まずニュートリノが電子に向かってWボソンを投げます。

するとWボソンを受け取った電子は、ニュートリノに換わります。ここでは分かりやすく、変化後のニュートリノを「ニュートリノ化した電子」と呼ぶことにします。

そして「ニュートリノ化した電子」が、受け取ったWボソンを投げ返すと、再び電子に戻ります。

 

一方、W⁻ボソンを基準にした⑦式のイメージ図が次のものです。

こちらは先ず、電子がWボソンを投げると、それを受け取ったニュートリノは電子に換わります。この電子を、分かりやすく「電子化したニュートリノ」と呼ぶことにします。

そして電子化したニュートリノが、ニュートリノ(ニュートリノ化した電子)にWボソンを投げ返すと、再びニュートリノに戻ります。

 

何だかずいぶんとややこしいですよね(汗)。

ひとまずここでは、この構造の理解を得るために「ニュートリノ化した電子」に着目してみたいと思います。

「ニュートリノ化した電子」とは、結局、ニュートリノのことですが、式にすると⑥の「e⁻(電子)+W⁺ボソン」に該当します。即ち、電子がWボソンを飲み込んだ状態がニュートリノであると考えることができます。

そして、W⁺ボソンとW⁻ボソンの違いについてですが、Wに付いた「⁺」と「⁻」は電荷を表しています。そのため負の電荷を持つ電子(e⁻)が、正の電荷を持つW⁺ボソンを飲み込むと、+と-が相殺されて中性(電荷ゼロ)になります。

このように負の電荷を持つ電子が、正の電荷を飲み込んで中性になったのがニュートリノ(ニュートリノ化した電子)ということですね。

 

ところでヌーソロジーでは、Ψ5が電子であり自己、Ψ6がニュートリノであり他者に該当しますが、今はこの関係性が転倒しているといいます。Ψ5の自己が他者となり、Ψ6の他者が自己となっているのです。

つまり、私たちの多くは、Wボソンを飲み込んでニュートリノ化(=他者化)しているのです。いわば《他者化した自己》です。

この《他者化した自己》は、Ψ6の「位置の中和」に因んで「中和した自己」とも言えるかも知れません。

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