引き続き、カルロ・ロヴェッリ著「すごい物理学講義」より引用します。
したがって、量子力学が発見した世界の三つの側面は、次のように要約できる。
〇粒性。ある物理学的な系のなかに存在する情報の総量は有限であり、それはプランク定数ℎによって限定される。
〇不確定性。未来は過去から一意的に導き出されるものではない。きわめて厳密な規則に従っているように見える事柄も、現実には統計的な結果にすぎない。
〇相関性。自然界のあらゆる事象は相互作用である。ある系における全事象は、別の系との関係のもとに発生する。
前回は、量子力学が発見した三つの要素「粒性・不確定性・相関性」の内、「粒性」について見ました。
私たちが通常考える「時空」は、連続的で無限に続くもの、正確に言えば、連続的で無限に続くと感じられるものでしたが、「量子的な時空」は粒状(離散的)で有限なものでした。
では、「不確定性」は、先ず、私たちが通常考える時空、いわゆる古典力学では、例えば、今時速100キロで進んでいる電車が、時速100キロを維持すると仮定し、1分後どの位置にいるか知ることができます。つまり「確定的」であり、「未来は過去から一意的に導き出されるもの」となります。星の運行などもそうですね。
一方、量子的な時空、いわゆる量子力学では、例えば、あくまで例えばですが、今時速100キロで進んでいる電子がいるとし、その電子が1分後どの位置にいるかは確率的にしか知ることができません。
というより、今時速100キロで進んでいる電子がいても、その電子の位置を正確に把握することはできません。逆に、電子の位置を把握すると、今度はその運動量(質量x速度)があやふやになると言います。つまり「不確定的」であり、「未来は過去から一意的に導き出されるものではない」となります。
このように粒子の位置と運動量、他には時間とエネルギーなど、その両方を同時に正確に測定することはできないという原理を「不確定性原理」と言います。
ところで、「不確定性」には、二つの側面があると言います。一つは、観測による不確定性、もう一つは粒子そのものが持つ不確定性です。
一つ目の「観測による不確定性」は、量子力学が発見した三つの要素の内の一つ「相関性」と関係し、電子など非常に小さな粒子は、観測(測定)によって少なからず影響を受けるため、正確な測定ができないというものです。つまり測定系と被測定系との「相関性(相互作用)」によって、結果に誤差が生まれるのです。
二つ目の「粒子そのものが持つ不確定性」は、いわゆる「量子ゆらぎ」と呼ばれるものです。量子ゆらぎは、観測と関係なく、粒子そのものが持つ物質的性質のことで、このゆらぎのため正確に測定できず、確率的にしか把握できないといいます。
量子ゆらぎ運動と、古典運動の違いは、形而上学的素領域理論の提唱者である保江邦夫著「Excelで学ぶ量子力学(CD-ROM付)」に掲載されている図を見ると、分かりやすいと思います。
この図は、本書付属のCD-ROMからお借りしたもので、横軸が時間、縦軸がX軸方向を示し、Y軸方向とZ軸方向を除いた1次元の運動を表したもので、上が量子ゆらぎが加味された「電子の自由運動」、下が量子ゆらぎを持たない「古典自由運動」を示しています。
ここで詳細は割愛させていただきますが、視覚的にその違いが分かるかと思います。量子ゆらぎを持つ電子はジグザグに動き、しかも一定ではありませんが、量子ゆらぎを持たないと、古典力学的な等速直線運動になるのを表現したものとなっています。
次回は、量子ゆらぎについてもう少し見て行きたいと思います。