ここ数回にわたり『量子もつれ』について見てきました。量子もつれは、私たちが通常考える「時空を超えた世界の出来事」のことでした。
そして、この「時空を超えた世界」こそが、今回のテーマである『量子的な時空(量子時空)』といえるのではないかと思います。
カルロ・ロヴェッリ著「すごい物理学講義」に、次のような内容があります。
したがって、量子力学が発見した世界の三つの側面は、次のように要約できる。
〇粒性。ある物理学的な系のなかに存在する情報の総量は有限であり、それはプランク定数ℎによって限定される。
〇不確定性。未来は過去から一意的に導き出されるものではない。きわめて厳密な規則に従っているように見える事柄も、現実には統計的な結果にすぎない。
〇相関性。自然界のあらゆる事象は相互作用である。ある系における全事象は、別の系との関係のもとに発生する。
詳しい内容を知りたい方は、ぜひ本書を手に取って読んでいただければと思いますが、この部分だけを切り取って考察すると、量子力学が発見した世界、即ち量子世界の特徴は「粒性・不確定性・相関性」の三つに要約できるということになります。
その内「粒性」は、形而上学的素領域理論から説明できますね。空間は、連続的に無限に続くものではなく、ビールの泡のようなつぶつぶでできている、即ち、離散的(とびとび)で有限ということです。
カルロ・ロヴェッリが専門とする『ループ量子重力理論』も、空間を粒(つぶ)の集まりとして理論展開しています。
また空間だけでなく時間も粒性(離散的)と言えます。これはパラパラ漫画を例に挙げると分かりやすいと思います。
パラパラ漫画は1枚1枚に絵を描き、それを高速でめくることで連続的な映像として見ることができるものです。つまり、量子的な時間は、パラパラ漫画の紙のように粒状で、それが積み重なることで私たちの目には連続的に映るのです。
なお、パラパラ漫画でいう1枚の紙から次の紙に移る最小時間を「プランク時間」と言います。また空間の粒と粒の間の最小距離を「プランク長さ」、空間の粒の最小体積を「プランク体積(プランク長さの3乗)」などと言います。
そして、このような最小の分割不可能な領域を「プランクスケール」と言い、この領域は私たちの目では認識できないため、空間にしても時間にしても、連続的にしか見られません。
パラパラ漫画も、ゆっくりめくれば粒(1枚1枚の紙)として認識できるでしょうが、高速にめくると連続的にしか見えないようなものです。
そういう意味で、紙1枚1枚の差異、あるいは空間の粒と粒の差異が明瞭な世界が「量子的な時空」とすれば、その差異が明瞭でなく連続的にしか見えない世界が私たちの通常考える「時空」と言えるかも知れません。そして、その差異を唯一認識できるのが私たちの意識と言えますね。