現代科学は、宇宙はビッグバンによって始まったと言います。しかし最近は(理論自体は1980年代からあるようです)、ビッグバンの前に指数関数的な急膨張「インフレーション」が起こったという、いわゆるインフレーション理論が有力なようですね。
*指数関数的な急膨張とは、倍々ゲームの膨張のことです。
図で見ると分かりやすいかも知れません。
出典:NASAよりお借りしたものを一部翻訳
上図(時間は左から右)は、量子ゆらぎから始まってインフレーションが起こり、その後ビッグバンとなって今の宇宙があるという進化モデルになっています。
この量子ゆらぎとインフレーション、そしてビッグバンの相関性について、天文学辞典より引用させていただきます。
現在では宇宙の誕生は一般には以下のように考えられている。
量子的論的な「ゆらぎ」によって莫大な数の小さな(ミクロな)時空(10^-35 m程度)が誕生した。
その中でインフラトンと呼ばれるスカラー場のエネルギーによって時空が指数関数的な膨張をして、量子力学の対象とはならない程度の大きな(マクロな)宇宙になったものがある。
この指数関数的な激しい膨張をインフレーションという。
(中略)
このインフラトンのエネルギーが放射に転化してインフレーションが終わり、宇宙は高温・高密度の放射で満たされる。
この時点のマクロな宇宙をガモフの考えたビッグバンの瞬間(火の玉)とする。
このように、現在ではインフレーション理論と組み合わせた形のビッグバン宇宙論が宇宙を記述する標準モデルとなっている。
一つ一つ見ていきたいと思います。まず、
量子的論的な「ゆらぎ」によって莫大な数の小さな(ミクロな)時空(10^-35 m程度)が誕生した。
というのは、形而上学的素領域理論に通じる内容ですね。
形而上学的素領域理論では、真空の自発的破れによって莫大な数の小さな素領域が誕生するわけですが、引用では、量子論的な「ゆらぎ」によって誕生するとあります。
従って、形而上学的素領域理論における真空の自発的破れと、インフレーション理論における宇宙初期の量子論的な「ゆらぎ」には、密接な関係があるような気がします。
また、小さな時空のサイズは「10^-35 m程度」とありますが、これはプランクスケールで、素領域の想定サイズと等価ですね。
そして、次の
その中でインフラトンと呼ばれるスカラー場のエネルギーによって時空が指数関数的な膨張をして、量子力学の対象とはならない程度の大きな(マクロな)宇宙になったものがある。
というのは、形而上学的素領域理論とは相容れない内容になっています。
形而上学的素領域理論では、ミクロな素領域がたくさん集まって、マクロな宇宙(時空)が形成されると考えますが、引用では、あたかも風船が膨らむように、ミクロな時空が膨張して、マクロな宇宙になるとあるからです。
ちなみに、私たちが住む宇宙の外には、私たちが観測できない宇宙が多数存在すると仮定する多元宇宙論(マルチバース宇宙論)は、ここから来ているようです。
引用を見る限りではありますが、「量子論的なゆらぎによって莫大な数の小さな時空が誕生し、その中で指数関数的な膨張をして、大きな宇宙になったものがある」、つまりインフレーションによってマクロ宇宙になったのは、私たちの住む宇宙(ユニバース)だけでなく、多数(マルチバース)存在する可能性があるというのですね。
ちょっと脱線してしまいましたが、続きは次回とさせていただきます。