唯識における「転識得智(てんじきとくち)」の前後では、同じように世の中を見ても、見える世界が変わってきます。もちろん、肉体の目で見える視覚情報は変わりませんが、あえて言えば、そこに肉体の目では見えない波動世界が重なって見えるようになるのです。
以前の記事で、「受動的思考で見る世の中は虚像だが、能動的思考で見る世の中は全て真実である」という内容を書きました。
これは言い換えると、受動的思考で認識する世の中はいつかは消えてなくなる虚しいものだが、能動的思考で認識する世の中は決して壊れることのない永遠なものであるとも言えます。
よく形あるものはいつか必ず壊れると言いますが、能動的思考で認識する世の中は、決して壊れることのない「形以前の形」だからです。
つまり、転識得智の前は、目に見える形に囚われて虚しい人生を送るしかないが、転識得智の後は、目に見える形、それ以前の形を見出して、豊かな人生を創造して行くことができるようになるのです。
さて、転識得智の「四智」の一つが『大円鏡智』なのですが、その内「大きな円」については前回書きましたので、ここでは「鏡」について見ていこうと思います。
普通鏡を見ると、そこに映る自分の顔は虚像（鏡像）です。つまり実体ではないと言うことです。従って大円鏡智を誤って解釈すると、自分の周りに存在するあらゆるものは、鏡に映る自分の顔と同じように全てが虚像に過ぎないとなるかも知れません。
実際、受動的思考で認識する世の中は全て虚像ですので、全くの間違いと言うわけではないでしょうが、これはあくまで転識得智の前の世界観です。
しかし転識得智の後の能動的思考で認識する世の中は全てが真実です。鏡に映る世界も同様で、転識得智の前は、鏡の中に虚像しか見ることができませんが、転識得智の後は、鏡の中に真実を見ることができるのです。
では、なぜこのようなことが可能なのか？
それは鏡だからとしか言いようがありませんが、もしかしたら「真実を見る目が開かれれば、鏡に映る自分も真実を見る目が開かれるため、そのとき鏡の中に真実が現れる」と言えるかも知れません。
これは鏡の中の世界が変わったのではなく、鏡を見る自分が変わったからこそ、そこに映る世界も変わってくると言うことですね。
もちろんこの時は、上記の通り、肉体の目で見る視覚情報は変わりませんが、そこに肉体の目では見えない波動世界が重なって見えると言うことです。
鏡についてはこれまで何度も書いてきましたが、鏡は私たちが真実を見出すための強力なツールの一つだと思います。そのためにはまず鏡に映る虚像世界から脱却していくことが第一ですね。
元記事：転識得智と大円鏡智
